2026/2/10 article
「自社のビジネスがAI前提ではないと、近い未来に競争力を失ってしまうのでは?」
そのような不安を感じる経営者の方が増えてきています。
AI前提=AIファーストです。
現在、いろいろな業界で多くの企業が、AIファースト化の取り組みを実践、あるいは模索している段階だと思います。
今回は弊社が支援している3つの業界である、建設、製造、物流業界の各事例から、具体的なAIファーストの取り組みを解説していきます。
自社システム、サービス、業務改善、全社ルール・導入支援、フィジカルAIまで、あえていろいろな取り組みをバリエーションを持って取り上げました。
また、AIファーストの取り組みについても、業務改善、AIファースト度合い、フィジカルAIなど分類しておりますので、各社の状況に合わせた具体的な取り組みの参考にしていただければ幸いです。
AIファーストとは何か?と、その取り組み方法について、前回記事を書いておりますので一度目を通していただければと思います。
本記事の内容についてより深く理解できるのではないかと思います。
AIファースト企業への変革を実現する8つのステップを解説
AIファーストとは、既存事業の効率化のために単にAIツールを導入する、ことではありません。
AIファーストとは、既存事業の枠組みを前提に、その一部にAIを足すことではなく、AIを最大限に生かすために、業務・データ・組織・ルールをAI前提で再設計することを指します。
具体的には、
(1) AI前提で新たなビジネス/サービスを作る
または
(2) AIのために既存事業を根本から見直す(再設計する)
という二方向があります。
特に既存事業を根本的に見直すと言うような取り組みを行う場合、業務変革、さらには経営変革とさえ言える全社的な取り組み等なることが多いです。
取り組みの種類:自社システム
AIファースト分類:AIファースト(業務改善のための自社システム内製)
コンクリートの打継面処理(チッピング等)の出来栄えは品質に直結しますが、従来は評価が属人的になりがちでした。
大成建設は、タブレット端末で打継面を撮影し、画像をメッシュ分割してAIが処理程度を判定し、約1秒で評価結果を可視化する仕組みを開発しています。
学習には約1万ケースのデータを用いた旨も示されています。
参考URL:https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250331_10412.html
AIファーストのポイント
・業務改善のためのシステムをAIの機能を活用して自社開発、活用している例。
・自社開発は、規模が小さく個人で行うようなものについて、AIファースト文脈的には内製とも呼ばれる。
・内製は、AIファースト化実現のための重要なテーマの1つ。
取り組みの種類:サービス
AIファースト分類:AIファースト(サービスとして販売)
建物の保守運用もAI化の効果が出やすい領域の1つです。
長期にわたり、同じ作業が定期的に繰り返される、と言う人間にとっては負担で、AIにとっては得意な領域であるためです。
日立ビルシステムのAIビルマネジメントは、3つのAI活用基盤から構成され、AIファーストな建物の保守運用を実現しています。
3つのAI活用基盤とは以下となります。
参考URL:https://www.hbs.co.jp/products/builmirai/
(a) FI-700:人流予測型エレベーター運行管理
過去の膨大な運行データをAIで解析して人の流れを予測し、混雑が予想される階に先回り配車する考え方の運行管理システムです。
(b) 遠隔監視・予兆保全(Lumada*)
エレベーター1台あたり約200項目のデータを収集し、80万件以上の保全履歴等も踏まえて、故障の予兆や部品寿命を判断する取り組みが説明されています。
*Lumada(ルマーダ)は、日立製作所が展開しているデジタル・イノベーション・プラットフォーム。
主にIoT(Internet of Things)、AI、ビッグデータ解析、クラウド、セキュリティなどの技術を統合し、工場やビル、エネルギーシステム、交通インフラなどから収集したデータをつなぎ、分析・可視化する仕組みを提供。
(c) BuilMirai:ビルIoTの統合監視
ビル内のさまざまな設備やデータを統合することで効率的なビル管理を実現し、利用者に、より快適なビル空間を提供するサービス。
AIファーストのポイント
・複数のAIサービスを組み合わせて1つのソリューションとするのは、AI以前からある王道的な方法。
・日立ビルシステムにとっては、Lumadaをデジタルプラットフォームとして使えるのも大きい。
取り組みの種類:サービス
AIファースト分類:AIネイティブ(サービスとして販売)
参考URL:https://jp.trane.com/ja/services/operate-maintain-repair/connectivity-and-cloud-services/trane-autonomous-control.html
HVACをディープラーニング等で予測制御し、自動化による省エネと排出削減を狙うサービスです。
今回の事例の中では、まさにAIありきで、AI前提で作られたサービスであり、AIファーストと言う以上にAIネイティブと言って良い取り組みです。
AIファーストとの違いは、AIファーストが既存業務をAIありきで見直すのに対し、AIネイティブはそもそもAIありきで1から新たに作ります。
Trane(アメリカの大手空調機器・ビルシステムメーカー)の自律制御システムにも採用され、120超施設において18ヶ月で1,132 tものCO₂を削減し、$329,000(約5,000万円/1ドル=154円換算)のコスト削減に繋がった事例が公開されています。
BrainBox AIは現在、Traneに買収されているようです。
AIファーストのポイント
・入力(データ取得):室温・湿度・外気・人流・BMS点情報
・AI処理(予測・最適化):将来の負荷や室温変化を先読みし、最適解を計算
・実行(自動制御):設定値をBMSに送り、HVACを稼働
・出力(効果):快適性改善、省エネ、CO₂削減
・フィードバック(学習):実際の結果データを再度AIが取り込み、モデルを改善
使えば使うほど、AIは環境に適応し、より正確で効率的になる、というAIファースト(AIネイティブ)のメリット具現化した内容と言える。
取り組みの種類:全社ルール・導入支援
AIファースト分類:AIファースト(ガバナンス+全社実装)
ConnectAI:生成AIの全社展開
OpenAIのLLMをベースにした社内AIアシスタントConnectAIを、国内全社員約12,400人に展開し、1年で18.6万時間削減、アクセス回数や利用増加などの実績を公開しています。
また、公開情報だけでなく、社外秘の品質管理文書等への回答(引用元表示機能付き)にも対象を広げたことが発表されています。
参考URL:https://news.panasonic.com/jp/press/jn240625-1
AIファーストのポイント
・トップダウンによる全社ルール化は、AI使用のための王道な方法。
・AIファースト化は、経営変革と言えるもののため、経営陣による明確な意思表現というのが、最初の取り組みとしてまず必要とされます。
・このパナソニックの例もそれを表していると言って良い。
取り組みの種類:フィジカルAI
AIファースト分類:AIファースト(フィジカルAIによる保全×安全×運行効率)
AmazonはUVeyeと組み、配送車両の日常点検を自動化するAutomated Vehicle Inspection(AVI)を導入。
車両をスキャンして異常を検知し、保全効率化・ダウンタイム削減・安全性向上を狙う、と説明されています。
UVeye側の発表では、Amazonの10万台超規模の車両・多数拠点への展開といった計画も語られています。
参考URL:https://www.aboutamazon.com/news/transportation/amazon-automated-vehicle-inspection
AIファーストのポイント
・物流業界は、フィジカルAIが、導入しやすく、なおかつ効果が出しやすい最たる業界。
・Amazonのような大手こそ、その効果はさらに出やすい。
取り組みの種類:フィジカルAI
AIファースト分類:AIファースト(仕分けの自動化)
DHL eCommerce Solutionsは、Atlanta拠点でDoraSorterをパイロットし、平均3.6秒で仕分け/ほぼゼロエラー/1,000個/時超などを公表。Sort-to-Bag構成で労働効率80%増などの数字も示しています(DHL発表)。
DHLの解説記事でも、Dorabotとの連携、1,000個/時・99%精度、仕分け能力の増加などが語られています。
参考URL:https://www.dhl.com/us-en/home/press/press-archive/2022/dhl-increases-productivity-with-successful-robotic-sortation-pilot-in-atlanta.html
AIファーストのポイント
・物流の中でも、仕分けは比較的構造化されており、ロボットの適用領域。
・そのため現段階では、まずこの仕分け作業からフィジカルAIの導入が進んでいる。
いかがだったでしょうか?
今回解説した通り、AIファースト化においては
など、いくつかの取り組みがありますが、基本的にはそれらが組み合わされた経営変革へとつながるのが本質となります。
また、フィジカルAIについては、既存業務の変革や業務改善にあたりますが、2026年の再注目AIワード、とも考えられておりこれから注目の領域となっております。
今後AIファースト化において、その取り組みの1つとしてフィジカルAIが考慮される事はさらに増えていくことでしょう。